ヒミツの王子さま!
るみと同じように艶やかに着飾った町は、いつも見慣れた景色のはずなのに。
なぜか全然知らない町に来てしまったような感覚になった。
それは間違いなく、街路樹や店舗のショーウィンドを飾るネオンのせいで。
どこからともなく賑やかなクリスマスソングも聞こえてきた。
「ねえ、そういえばさ……」
ぼんやりと、クリスマスの飾りを眺めていた俺に、るみが遠慮がちに声をかけてきた。
何を聞かれるのか、すぐにわかった。
「日向と、その……何かあったの?」
「……」
やっぱり。
ずっとるみが気にしてるのはわかってた。
るみだけじゃない、きっとクラスの奴らみんな気付いてる。
だって今まで転校してきてからずっとつるんできた俺たちが、今ではギクシャクしてて、話はもとより、目すら合わせてないんだから。
『合わせてない』って言うよりは
『合わせてくれない』の方が近いな。
「なにも? るみの前で親友のフリしなくても済むようになったからじゃん?」
「……そ、か」
なんだか納得いかないような顔をしたけど、るみはそれ以上はなにも聞いてこなかった。
少しだけ無言になった。
この重たい空気を打破したのは、他でもない、るみだ。
「ねえ! プレゼント、ちゃんと用意した?見てー、あたしは……ほらっこれ」
「……ぶ! なにそれ」
ジャジャーンって効果音と共に出されたのは、昔流行った音楽が鳴ると躍る、あれ。
「今更でしょ? でも、見てると元気になれんの」
そう言って笑うるみ。
俺も同じように笑みを返すと、ポケットの中でギュッと手を握りしめた。
……プレゼントか……。