ヒミツの王子さま!
授業が終わると、俺は転校初日の洗礼を受けていた。
だいたい、質問攻めに合うか、無視されるかどっちかだろう。
そして、俺は今質問攻めにあっている。
『きれいな肌~!ニキビとか全然ないね』
「あ・・・りがとう」
『咲坂さん、どこから来たの?この時期に転校なんて珍しいよね』
「うん、まあ・・・」
『ナオッちって呼んでいい?』
「え?あー・・・・うん」
『かっわい~!人形みたぁい』
「……」
あーもう!うっせんだよ。
ほっといてほしい。
女ってどうしてこう聞きたがりの言いたがりなわけ!?
俺は、本当の笑顔を忘れてしまいそうな程、引きつった笑みを浮かべているに違いない。
俺はそれがバレないように、適当にあしらいながら聞き流した。
・・・いやね?
俺が一番今気になってるのはさ、なんで誰も俺の正体に気付かないかって事。
気づかれたら困るんだけど、まったく気づかれないのも気にきらない。
360度、女に囲まれて無駄に甘ったるい香りに俺は息が詰まりそうになる。
耐えらんねぇ…
俺の決意はグラリと揺らいだ。
まじ無理!
あきらめかけたその時…
「はいはーい!」
耐えかねて、席を立とうとした瞬間、俺の周りの人だかりをかきわけてひょっこり顔を出したのは槙野日向だった。
「ナオちゃん学校の中を案内したいんだけど・・・」
槙野はそう言って、俺の腕を掴んで目配せをした。
「・・・あー、うん」
助かった・・・
槙野は心配して、俺を連れ出してくれたんだろう。