ヒミツの王子さま!


――帰り道。

時刻はすっかり遅くなっていて。
もうすぐ日付が変わろうとしていた。


数人と一緒に、まだ明るい駅前を歩く。



「それじゃ、今日はありがとう。また来年ね!」

「おう! 正月太りすんなよなー」

「うっさいなぁ」



たわいもない話をして、改札口で別れた。

壱也もるみも、電車だからそこで別れたんだけど。
俺はここから最終のバスに乗って、帰る。


そして……日向も。




さっきまで賑やかだったのに、急に静かになって。



ふたりきりになってしまった。



「……んじゃ、行く?」

「うん……」



あんだ?
この気まずい空気。


慣れない……こんなの俺らしくない……。





先に歩き出した俺の後を、ゆっくり小さな足音が付いてくる。


なぜかそれだけの事なのに、嬉しいと思ってしまうのは……。




今日がクリスマスだからだろうか……。







煌びやかなクリスマスのイルミネーションを潜り抜けて見えてきたのは、誰もいないバス停で。


ああ、もうついた……。

なんて少し物足りない気分になる。



別に、会話なんてないのに。


「……」

「……」



あぁー、もう!

俺は振り返ると、日向を呼んだ。


「日向!」




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