ヒミツの王子さま!

瞬きをした日向の顔をジッと見つめる。
どんな反応すんのか確かめたくて。


見れば見るほどなぜかどんどん赤くなる日向の顔。
それは耳まで染めて、大きな瞳を潤ませた。



……なんつー顔……。
自覚あんの?


それって……反則。




理性と本能がゆらゆら揺れる。



自然と、握りしめた手にギュッと力がこもる。




クリスマス仕様なのか?
いつもより化粧がしてある。

マスカラのついたまつ毛が閉じるたび、それにかかる前髪が動く。


ぷっくり熟れた果実のような唇には、チェリー色のグロスが乗ってる。



俺はそこに釘付けになった。




今わかった……。
るみが言いたかった事。



確かに。




うまそうだもん。






恥ずかしくなるくらい見つめていると、その唇が少しだけ開いた。
中から、真っ白な歯がチラリとのぞき、また俺を刺激した。




「それって……どういう……」




震える声。


汗ばむ手。



加速する心音。




「したいって、そう思ったから。ただそれだけ」



そうだ。

抑えきれない感情が、そんなとんでもない行動に俺をかきたてたんだ。




「……」



と、そこへタイミングを見計らったかのように、唸りを上げてバスが停留所に滑り込んできた。


プシューって音を立てて、バスが口を開けた。

俺はそれにチラリと目を向けて、また日向に戻した。





「ナオ……あたし……」


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