ヒミツの王子さま!
「みんなもうウワサは聞いたと思うが、咲坂は事情があって女子として編入する必要があったんだ」
成瀬に引率され、戻った教室では。
思ってた通り、クラス中から白い目で見られた。
成瀬のそんな言葉は、きっとみんなの耳には届いていない。
だって現にさ……。
俺を見る目が語ってんだもん。
『サイテイ』
『信じてたのに』
『友達だと思ってた』
『裏切り者』
……って。
視線から。
肌から。
空気から。
それは耳にまとわりついて、俺の頭の中に響く。
わかってた。
こうなることは。
だからしょーがないし、俺は平気。
「……」
平気なんだって。
だから…………、日向…………。
泣くなよ……。
頼むから……。
ひとりだけ、顔を覆って小さな体を震わせる日向がいて。
また、だ。
胸の奥が軋む。
俺は……、その姿を見ていられなくて。
そっと目を伏せた。