ヒミツの王子さま!
下駄箱で靴を脱いだその時、足元に影が落ちた。
顔を上げると。
「……日向」
「……」
目の前には、ちょうど上靴に手をかけた日向がいた。
るみと壱也は変わらないだけど……。
日向とは、それ以前に気まずい雰囲気だったりすんだよなぁ。
「はよ」
って、声かけてみたりして。
俺にチラリと視線を合わせただけで、ビクリと体を震わせるあたり、嫌われたのかも。
ハハハ、んなあからさまに……。
クラスの連中からシカトされるより、こっちのがこたえる……。
「はあ……」
俺は小さくため息をこぼすと、鞄を肩にかけ直した。
俺が背を向けようとした瞬間、日向の口が動いたかもしれない。
けど、俺はあえてそのままにした。
だって、また視線を合わせて怯えさせる必要はないもんな。
ガシガシと髪を掻きながら階段を上がる俺の横に、いつのまにか壱也が並ぶ。
「まーだ喧嘩してんの?いい加減素直になんなって」
頭一つ分高い壱也が、上から俺を見下ろした。
その顔は、呆れ顔。
「……っせーな。ほっとけよ」
ツンとその視線を跳ね返して、俺は目を細めた。
しょーがないでしょ。
俺だって、どうしたらいいのかわかんないんだ。