ヒミツの王子さま!
体の小さな日向は、追い込まれるように壁に背をつけている。
女子だけじゃない、その中には男もいて。
みんな顔は、笑ってる。
楽しくて笑ってるんじゃない。
それは、好奇の笑みだ。
俺はそれを知ってる。
日向……。
すぐにでもそこへ行って、「なにしてんだ」って言うべきなのに。
日向がどうしてああなっているのか、見当はくつのに。
俺はその場に縛り付けられたみたいに、動けなくなっていた。
……なにしてんだ、俺……
ギュッと手を握りしめた、その時。
「謝って!」
大きな日向の声が一瞬、辺りをシンとさせた。
その声は震えていて。
俺の心臓を揺さぶった。
日向を囲んでいた中のひとりが「はは」って笑ったのがわかる。
「謝ってほしいのは、俺らの方だよ。なあ?
だってさ、咲坂は男ってことを隠して俺らと同じように生活してたんだろ? 裏切られたのは俺らじゃん?」
……。
「……ナオは、みんなを裏切ってたわけじゃない!
それは、みんなもちゃんと考えればわかるはずじゃない」
「……。
でも、日向は最初から知ってたからそんなふうに思えるんでしょ? いきなり、“男でした。ハイそうですか”ってなれるほど、あたし達都合よくない」
みんなに責められて、唇をグッと噛む日向。
その姿は、泣くまいと堪えてるようで……。
それでもグッと顔を上げた日向は、絞り出すようにまだ何かを言おうとしていた。
「でも……っ、そうかもしれないけどっ……」
…………くそっ。