ヒミツの王子さま!


体の小さな日向は、追い込まれるように壁に背をつけている。



女子だけじゃない、その中には男もいて。
みんな顔は、笑ってる。

楽しくて笑ってるんじゃない。



それは、好奇の笑みだ。


俺はそれを知ってる。






日向……。




すぐにでもそこへ行って、「なにしてんだ」って言うべきなのに。


日向がどうしてああなっているのか、見当はくつのに。



俺はその場に縛り付けられたみたいに、動けなくなっていた。






……なにしてんだ、俺……


ギュッと手を握りしめた、その時。








「謝って!」




大きな日向の声が一瞬、辺りをシンとさせた。


その声は震えていて。


俺の心臓を揺さぶった。





日向を囲んでいた中のひとりが「はは」って笑ったのがわかる。



「謝ってほしいのは、俺らの方だよ。なあ?
だってさ、咲坂は男ってことを隠して俺らと同じように生活してたんだろ? 裏切られたのは俺らじゃん?」



……。



「……ナオは、みんなを裏切ってたわけじゃない!
それは、みんなもちゃんと考えればわかるはずじゃない」


「……。
でも、日向は最初から知ってたからそんなふうに思えるんでしょ? いきなり、“男でした。ハイそうですか”ってなれるほど、あたし達都合よくない」



みんなに責められて、唇をグッと噛む日向。
その姿は、泣くまいと堪えてるようで……。

それでもグッと顔を上げた日向は、絞り出すようにまだ何かを言おうとしていた。




「でも……っ、そうかもしれないけどっ……」






…………くそっ。










< 152 / 214 >

この作品をシェア

pagetop