ヒミツの王子さま!


全員が、成り行きを見守って押し黙ってる。


その重圧に、押しつぶされそうだ。




その時、日向が俺のセーターの裾を掴んだのがわかった。


それだけで伝わる、日向の体温。




そして……震え。





ふと周りを見渡すと。

さっきよりずいぶんたくさんの人が集まってきていて。



はぁぁあ。
そう、深くため息をつくと、ついでに小さく息を吸い込んだ。




……。





「……しょーもないミスだった。

ただの記入間違い。 
たったそれだけのことで、俺は女じゃないとこの高校に入れなかった。

最初はさ……
マジでありえねーって思ってたけど、だけどそれはそれで楽しくて」




なにもかも、ありえない事で。

慣れない事だったけど、理事長の言うように、俺は楽しでたんだ……。





「だからかな……。

いつの間にか、俺が女としてこの学校に通ってて。
みんなは……、
俺を女って認識してるって事忘れてた。

バレたら退学って言われてたんだけど、俺…
バレてもいいか、なんて心のどっかで思ってたんだ。


日向も壱也も、必死で隠そうとしてくれたのに……

俺、ほんとはそう思ってた」





そうなんだ……。

俺、こーなってから、体の中の毒素が抜けたみたいに軽いんだ。



日向や壱也にも……もう迷惑かけたくない。



落としていた視線を上げると、俺は手で髪をクシャリとすいた。



< 154 / 214 >

この作品をシェア

pagetop