ヒミツの王子さま!
早朝の学校は、まだ人影もまばら。
真冬のせいもあって、まだ靄がかかってるみたいに霞んで見えた。
朝日がキラキラと校庭を照らしていて。
眩しい。
そこには運動部の朝練して奴らがいるくらいで、校舎の中は今のとこ誰もいない。
かばんを肩にかけ直しながら、俺は下駄箱で靴に手をかけた。
と、その時。
「あれ、早いんだね」
周りには誰もいない。
そう思い込んでいたから、突然声をかけられ、内心ビビってしまった。
その声に顔を上げると。
……うわ。
思わず眉間にシワが。
「あはは。そんなに嫌な顔しなくてもいいじゃん。 ひっどいなぁ~」
「……なんだよ。 なんか用?」
真っ黒な髪をサラサラとなびかせて、やたら爽やかな天使の微笑みを振りまくヤツ。
そんなうさん臭い奴はひとりしかいない。
「今日は委員会の仕事。
それより君は?いつもHRギリギリの人がこんなに早いのはわけありでしょ」
「それ、葉月には関係なくない?」
はあ、めんどくせーヤツ。
なぜかやたら親しげに話しかけてくる葉月から視線をおとし、手にかけていた靴を変えた。