ヒミツの王子さま!
俺が靴を履き替えて歩き出すのを待っていたかのように、葉月は並んでついてくる。
「ジャージなんだね」
「は?」
唐突にそんなことを言われ、また眉間にシワ。
首を傾げた俺を見て、葉月は「それ」と指差した。
その先を追う。
……ああ。
「ま、ね。 男ってみんな知ってるのに女子の制服は着れないでしょ」
「そうだね。 でも、不思議だなぁ、そうやってジャージ着てる君を見るともう男にしか見えないもんね」
うーんって腕を組んで納得してる葉月。
それがなぜかおかしくて、思わず吹き出してしまった。
「……ははっ。んだよ、それー。俺は女の制服を着てただけで、別に女らしくしてた覚えねーんだけど」
「うーん。確かにそう言われれば……。ま、俺は気付いてたけどね」
ほんと、変なヤツ。
勝ち誇った顔されてもなぁ。
でも………。
「葉月はさ、もっと前から気付いてたんだろ?
だったらなんでバラさなかったんだ?」
そうだよな。
葉月が俺の事を言ってたなら、もっと早くこんな展開になってたはずだ。
誰もいない廊下の先を見つめたまま言った俺。
チラリと見上げるのと同時。
葉月は「え?」と驚いたように目を見開いた。