ヒミツの王子さま!
「――……秘密の共有ってのは、効果絶大だな」
「……はあ?」
突然何を言い出すのかと思えば。
訳わからん……。
もういいや。
「んじゃ、俺こっちなんで」
今まで並んで歩いていた事に、急に違和感を感じて、俺はクイッと顎で先を指し示すと葉月に背を向けた。
「――咲坂っ」
「?」
背中越しに呼び止められて、視線だけ向ける。
「素直になんなよ。遠慮する必要はないって。後悔してからじゃ遅いんじゃない?
頭で考えてる事より、体は正直だからね」
「はあ?」と首を傾げた俺に、葉月はにっこりと意味深な笑みを残しただけで、階段を上がって行ってしまった。
「…………どういう意味だよ」
頭で考えるより……って。
つか、葉月が俺の何を知ってんだよ。
…………腹立つ。
なぜか俺はしばらくそこから動き出せなくて。
見えなくなった葉月の残像を追っていた。
「――……失礼します」
……ギイイ。
あれ、重い……。
まるで岩でも押すみたな感覚に、うんざりした。
飴色のその扉は、何度か開けた事があるはずなのに。
こんなに重く感じた事はない。
冷たくなった手のせいか?
俺は、それが小さく震えているのに気付いてしまった。
それをグッと握りしめる。
そして。
俯いていた視線を、ゆっくりと上げていく。
「おはよう。 来たのね」
「…………」
真っ直ぐに見据える先。
そこにはいつものように両手を組んで、大きな椅子に座る理事長がいた。