ヒミツの王子さま!



俺の話を黙って聞いていた理事長は、それから静かに口を開いた。




「それで……あなたは本当にいいのね?」




相変わらず手を組んで、そっと俺を見つめる。

優しいまなざしの中に、強い意志も見えた。




「……いや。いいもなにも、最初からそー言う約束だったし」



……てゆか。
理事長たるアンタが、そんな事言うなよなぁ。




「決めたんだ。
もうこんな茶番は終わりにしようって。
俺がここにいることで、みんなを惑わせるなら、それならいっそのこと、いなくなったほうがいい。

そうに決まってる」




静かに閉まる飴色の扉を背に、吐き出すように息をつく。


『そうに決まってる』……か。
はは。まるで自分に言い聞かせてるみたいだな。


なんて、そんなことを考えておかしくて笑えてしまった。

その時だった。
誰もいない廊下。油断していた俺の背中に、なんとも呑気な声が届いた。




「なーにひとりで笑ってるの? 」




こんな風に話すのは一人しかいない。




「あのさ、壱也……いるなら声かけろっつの」




コイツを見ると、どーも俺の目が勝手に据わるなぁ。
まだ眠たそうな壱也をジトーって見上げた。





あれ?



「……」

「……ん? なに?」






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