ヒミツの王子さま!
きょとんと首を傾げた壱也。
……と、俺。
「壱也、お前……背、縮んだ?」
「え? 何言ってんの。まだまだ成長期……って、ナオが少し伸びたんじゃない?」
俺?
ふと、窓に目をやる。
窓越しに自分と目が合って、気付く。
たしかに……
この学校に転校してきてから伸びたかもしれない。
今まで毎日の牛乳を欠かさなかった。
高2の終わりにようやく成果が出てきたってわけか……。
……おそ。
それでも壱也との差は、きっと10センチ以上はある。
隣でニコニコと俺を見下ろす壱也を睨んでから、教室に足を向けた。
あーあ。
こんなだから、女に間違われんだよな。
伸びた髪をクシャリと持ち上げて、無意識にため息をついた。
そんな俺を、壱也が覗き込む。
「ナオ?」
茶色の柔らかな髪が勝手に視界に割り込む。
それと同時に、甘ったるいムスクの香りも俺を包んだ。
もちろん、そんな至近距離に男が来ても嬉しくないわけで。
俺の眉間も反応する。
「……なんだよ。ちけーな」
「ナオさ。 学校、辞めんの?」
「……」
思わず立ち止まった俺。
壱也は、その数歩先で同じように立ち止まり、ゆっくり振り返った。