ヒミツの王子さま!
「さっきの話。聞こえちゃった」
口元を緩めて、フッと笑う壱也。
その顔は、全部お見通しって言ってるようだ。
え、また?
あの理事長室……防音にした方がいいんじゃないの?
なんて愚痴る余裕がある。
「それで。 みんなには?」
壱也は今度はしっかりと俺と向き合うように立つと、首を傾げた。
「……言わないよ。
また、面倒な事になりそうだし」
『はあ』と溜息をついて鞄を肩にかけ直す。
もうこれ以上の面倒は、ごめんだった。
今でさえ、困らせてんのに……。
「……そっか。 じゃあ、日向には?」
「……」
俯いていた視線を思わず上げた。
……ビビった……。
まさか、壱也に今言われるとは思わなかったし。
「…………言わない。
つか、最近全然話してないし。 俺、嫌われてんじゃん?」
やっぱり、あのキスがまずったのかな……。
だよなぁ、日向は壱也が好きなのに。
俺なんかが急に割り込んだんだもんな。
窓の外に視線を向けると、校庭にはたくさんの生徒がすでにいて。
階段の下の方からは、楽しそうな話し声も聞こえてきた。
「……ナオさぁ」