ヒミツの王子さま!
呆れたような声。
「ほんとにそう思ってんの?」
「は?」
どういう意味?
つか、何に対して?
あからさまにキョトンとした俺を見て、壱也はなぜか「ブハっ」って吹き出した。
「日向、大変だなぁ」
「はあ? なんだよそれ。どういう意味だよ」
訳わからん!
「俺にはぜーんぶわかってるんだよ」って顔がマジで腹立つっつの!
イライラしてる俺を見て、「やれやれ」って肩をすくめた壱也はふと目じりを下げた。
「でも……」
……。
天使の微笑み……。
よりも、なぜかもっともっと……心を鷲掴みにされたみたいだ。
「“言って後悔”するより“言わないで後悔する”方が後々苦い思い出になると、……俺は思うな」
そう言って、
背中を向けてしまった壱也。
「……」
俺はしばらくそこから動き出せなくて。
壱也と葉月が、同じような事を言っていたような気はするけど……。
とにかく俺は、まったくもって意味がわからなかった。
学校辞めるって……みんなに言えって事か?
それは、最後の日でいいじゃん?
立ち竦んでいた俺を、いつのまにかたくさんの生徒が追い越していく。
たぶん、俺の噂を知っているんだろう。
時々、チラッと俺を盗み見るやつが何人かいた。
年が明けたばっかりだと思っていたのに。
もうすぐ3月で。
修了式も間近に迫っていた。