ヒミツの王子さま!
「……」
俺を見つめたまま、何も言わない日向。
驚いて何度も瞬きをする俺から、日向はオロオロと視線を落とした。
「……忘れ物? 修了式なんて面倒なだけだよな」
「……」
取り留めもない事を言って、笑った。
だけど、そんな俺に目を合わせることもなく、日向はその場から動き出さない。
……。
気まずい。
つか、なんだ?この重苦しい空気は。
眩暈しそう。
「……んじゃ、俺……先に行くから」
小さくため息をつくと、俺は日向をすり抜けながら言った。
その時だった。
まるで今にも消え入りそうな声が聞こえたのは。
「……なんで?」
「え?」
振り向くと、俺の位置からじゃ日向の顔は見えなくて。
でも、唇をかみしめたのはわかった。
「……うそ、だよね?」
「……」
そう言うと、日向はくるっと振り返った。
日向がこっちを向いたの時、髪がふわりと揺れ。
シャンプーの甘い香りが鼻をかすめる。
ふと蘇る記憶。
屋上で、日向とふたりきりになった時の事を思い出してしまった。