ヒミツの王子さま!

「……」


俺を見つめたまま、何も言わない日向。



驚いて何度も瞬きをする俺から、日向はオロオロと視線を落とした。




「……忘れ物? 修了式なんて面倒なだけだよな」


「……」



取り留めもない事を言って、笑った。
だけど、そんな俺に目を合わせることもなく、日向はその場から動き出さない。



……。

気まずい。

つか、なんだ?この重苦しい空気は。



眩暈しそう。





「……んじゃ、俺……先に行くから」



小さくため息をつくと、俺は日向をすり抜けながら言った。





その時だった。

まるで今にも消え入りそうな声が聞こえたのは。




「……なんで?」


「え?」




振り向くと、俺の位置からじゃ日向の顔は見えなくて。

でも、唇をかみしめたのはわかった。



「……うそ、だよね?」


「……」




そう言うと、日向はくるっと振り返った。
日向がこっちを向いたの時、髪がふわりと揺れ。

シャンプーの甘い香りが鼻をかすめる。



ふと蘇る記憶。
屋上で、日向とふたりきりになった時の事を思い出してしまった。



< 174 / 214 >

この作品をシェア

pagetop