ヒミツの王子さま!


まだほんの数か月前だというのに、なぜかもっともっと前のような気がしてしまう。


あの時も……
泣いてたなぁ……。


ほんとに俺といる時は、泣いてるか、心配そうにしてるかどっちかだったかも。



あーあ。
そりゃ、話してても楽しい壱也に惚れちゃうわ。


つか、俺なんてきっと最初から入る隙なんてなかったはずだし。



落としていた顔を上げて、日向を真っ直ぐに見る。


廊下の窓からの日差しで、いつもより明るい髪は、甘そうな蜂蜜色。
柔らかなその髪は、艶っぽくて、なにより触りたくなる。


俺を見つめる大きな瞳。
それは薄く化粧されてて、唇にはさくらんぼ色のリップが相変わらずうまそう。



卵のような肌。
首、鎖骨。



そして、短いえんじのスカートから伸びるまっすぐな足。
それは健康的で、けして痩せても太ってもいない。



目の前の日向は、初めて会った時から何も変わらないようで。
やっぱり少し、大人になっていた。






大きな瞳に涙を浮かべるその顔は、俺の理性を揺さぶる。



胸の奥が何かにたたかれてるみたいに、ドンドン痛い。

突き上げるような切なさに、息がつまりそうだ。








「……退学の事、だよな?」

「……今日で終わりなんて、うそなんでしょ?
職員室で先生達が話してるの聞いちゃった子がいて……。

なんで黙ってたの?
うそだよね……ね?ナオ……」




ギョッ!


って思わず体を震わせた。



な、泣くなよぉー!


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