ヒミツの王子さま!
「まあまあ、持田。そんな怒らなくてもいいでしょ。ちょっと前までは、悲しいかな男に呼び出されてたんだよ? この子」
両手に大きな紙袋を下げた壱也が、呑気な声と勘に障るセリフを連れて現れた。
ガサっと音がするくらい、袋の中には大量の何かが詰め込まれてる。
中身はもちろん。
チョコだ。
「……それは……」
なぜかその言葉で黙るるみ。
こいつら……言いたい事言いやがって。
目を細めて、ジュースをストローをくわえた。
「でも、なんで断らないの?」
袋の中の一つを出して、さっそく口に入れた壱也はそう言いながら首を傾げた。
「……なんでって言われても」
ズズーってなくなりそうなジュースを飲みながら、チラリと視線だけを上げる。
……。
そこには、俺を真っ直ぐ見る日向がいて。
俺の答えを待っている。
「……今まで、こうしてチョコを貰うって事なかったっつーのもあるけど……」
そうなんだ。
俺、女に間違われる事多かったから、バレンタインって日に、特別たくさんの女子からチョコを貰うなんて経験はなかったんだ。
それが……今年は何かが違うらしくて。
机の中に見えるピンクや赤でラッピングされた箱、多数。
鞄の中に突っこまれた同様の箱、多数。
入りきらなくて、ブレザーとズボンのポケットに入ってるの数個。
全部、断りきれなくて、もらったチョコだ。