ヒミツの王子さま!
「受け取るだけでいいって言われると、そうしちゃうって言うか……」
ダメなのかな……。
これ。
俯いた俺に、るみは「はあ」とため息をついた。
「……あのね、ナオ。
彼女がいる人は、どんなに必死になって渡してきたとしても、そのチョコがどんなものだったとしても。
それを受け取っちゃダメなんだよ?
ましてや同情なんかは絶対ダメ。どっちも傷つけるだけなんだから」
「……」
穏やかな昼下がり。
俺たちの周りだけシンと静まり返って。
るみは日向の背中にそっと手を置いて、「行こ」って言ってその場を離れた。
「……」
「……」
そのほんの一瞬、日向が俺を振り返って、目があったのに、すぐに逸らされてしまった。
取り残されたのは。
俺と、壱也。 それから葉月だ。
「……」
茫然とする俺の肩に、ズシンと何かがのしかかる。
「……がんばれよ」
そう言って、葉月は自分の席に戻って行った。
葉月の手の重さで、俺の体は傾いたまま。
壱也は口に入れようと固まったままだったチョコに視線を落として。
「食べる?」
なんて俺に言う。
首を振って断ると、それはそのまま袋に戻された。
……なんだ、これ。
肩が、重い……。