ヒミツの王子さま!
女の姿でこの高校に紛れ込んでから一ヶ月は経とうとしていた。
でも俺は、まだその姿の自分に慣れない。
つか、慣れたくもない。
「この一ヶ月で、結構な人数に告られてるだろ?
密かにファンクラブまで出来てるらしいし。
なのに、咲坂は彼氏を作らない。
それはなぜかっ!?」
「・・・なぜか?」
一歩また一歩と俺に近付いてくる壱矢と同じように、俺も後退りする。
その恐ろしくも怪しい形相から視線がそらせない。
「お前が俺を好きだからだっ!」
「・・・」
待て?
今、なんつった?
「おま・・・アホ?」
かろうじて声を絞りだして言えた言葉はこれしかなかった。
「それは、冗談だけど。」
壱矢はズボンのホケットに片手をつっこんでニヘラと笑った。