ヒミツの王子さま!
俺が見に行った時にいなかった壱矢は『恐怖の要塞』と書かれた看板の前で知らない女の子と楽しそうに笑っていた。
「・・・ったく」
壱矢も爽やかな天使の微笑みを惜しみなく振りまいている。
女の子よりも頭一つ分以上高い壱矢。
あれだけ背があったなら・・・
壱矢のような顔だったなら・・・・
俺の人生変わってたのかな。
そう思った瞬間、7年前の記憶が甦ってきて俺は思わず視線を落とした。
「あほくせ・・・」
1人でそう呟いて、空を仰いだ。
「ナオ」
不意に名前を呼ばれ、体がビクリと跳ねた。
誰かが来ていたなんてまったく気が付かなかった。
俺は、ゆっくりと振り返った。