ヒミツの王子さま!

「どうかしたじゃない! あれがなくてどうするのよ? あんたそんな上下ジャージ着て、そんな話し方で……女の子って認めてもらえるかもわかんないじゃない!」


「わかんないの!?」と、るみは真っ赤な顔をして俺に詰め寄った。
その鬼気迫る表情に、ポニーテールまでもがユラユラ揺れている。


「……」

「るみ、落ち着いて?」


にらみ合ったまま、押し黙った俺達の間に日向がなだめるように入ってきた。

それでもるみの強い視線は、俺から外れることはなくて。
唇を噛み締めて、悔しそうに瞳を揺らした。


「…………」


ここまで来て……。
もう無理?



みんなに謝って、許してくんなくても謝って、それで済むなら。


たかが、学食。

……されど、学食。





「……遅れただけでも、勝算はかなり減ったのに……これじゃステージに上がることも出来ない」

「…………」



そう言ったるみの瞳から、今にも零れてきそうな涙。

……そんなに、このイベントに力注いでたのか?

少し不思議に思った俺は、るみをジッと見つめた。


なんか裏に……あるな?




「……仕方ないよ、るみ。 みんなにはちゃんと事情説明して……」



がっくりと肩を落としていたるみに、そっと触れながら日向は言った。





その時、俺達にまとわりつく重たい空気を震わすほどの大きな歓声が上がった。


それは恍惚のどよめき。




『…………これは、すばらしい!』





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