ヒミツの王子さま!
ちょ、ちょっと待て?
なんか今、おかしくなかったか?
俺たちは舞台袖で、お互いの顔を見合わせた。
「……今、今……日向って聞こえたような」
るみも日向も泣き顔のままきょとんとしてる。
俺の横で壱也も、片眉をクイッと持ち上げて見せた。
心なしか会場内も、シンと静まり返っている。
と、なんともまぬけな間。
――わあああああ!
『さあ、槙野日向さん、どこですか? みなさんお待ちですよー!』
止まっていた時を取り戻すような会場のどよめき。
そして同時に、MCの耳をつんざくような声に、俺は不覚にも小さく飛び上がってしまった。
「え、あたし!?」
「すごい……奇跡が起きた!」
呼ばれている張本人は、ずるずるとステージから離れていく。
ヒ・ナ・タ!
ヒ・ナ・タ!
空気を震わすようなヒナタコール。
胸の前で両手をギュッと握りしめた日向が、泣きそうな顔で振り返った。