ヒミツの王子さま!
鈍感な彼女


教室の窓から見えるのは、低く流れる雲。
空は薄く霞みがかって見えて、「ああ、冬が近い」なんて考えてしまう。


俺は太陽の日差しが当たる窓際の席に座って、ぼんやりと外を眺めていた。




空からグランドに視線を落とすと、数人の女子たちが、バトミントンをやっているのが見えた。




あんな短いスカートはいて、よく動き回れるな。
マジで気がしれねぇ……。


すっかり板についた女の制服を着た自分と、窓ガラス越しに目が合って思わず眉間にシワを寄せた。



つか、気がしれないのは、俺の方か……。
これ着てて違和感ないのはおかしい。



「はあ……」



思い切りため息をついたのと同時。
背中に小さな衝撃と共に、栗色の髪がいきなり視界に飛び込んできた。



「ナーオ!」

「いてっ」



頬杖をついてたもんだから、その勢いにガクッと机で顔を打った。



「あ……ごめん。大丈夫?」



そう言って、心配そうに俺を覗き込んだのは……。



「大丈夫じゃねーっつの!
やめろって何回言ったらわかんだよ、るみ!」


「えー……だってナオの背中から妙な哀愁が……。だから思わず。ごめんね?」



そう言いつつ、口元は笑ってるし……。
全然反省してねぇ!



MSCが開催されて以来、るみは俺になついている。

そして、さらに目を細めた俺を見てケラケラ笑うその姿は、もうあの失恋をふっきったようだ。



その屈託のない笑顔を見ると、どうしても怒れない俺がいて……。

なんか調子狂う。



「てかナオってほんと男みたい!女にしとくのもったいないなー」



ってこれが最近のるみの口癖だ。



……いやいやいやいや。
笑えないっつの。




< 91 / 214 >

この作品をシェア

pagetop