ヒミツの王子さま!
まるで俺らの空気を裂くような声。
ハッとして顔を上げると、胸の前でパチンと両手を合わせたるみが日向を見た。
「さっき廊下で葉月に会ったよ」
たった今夢から覚めたみたいに、日向は瞬きを繰り返すと、きょとんと首をかしげた。
「え、慧吾くん?」
葉月慧吾?
って、誰だ?
「放課後、委員会があるから、図書室に来てって。日向に伝言」
「そっか、うん……わかった。 ありがとう」
日向がそう言ったのと同時。
――…キーンコーンカーンコーン
午後の授業の始まりを告げる予鈴が鳴った。
ゾロゾロとみんなは自分の席に戻っていく。
もちろん、るみも日向も。
だけど壱也だけは戻ってこなくて。
ほんとにギリギリで入ってきたかと思うと、教壇に立つ先生に「すみません」と爽やかな笑顔を向けた。
……あいつ、あれでクラス委員なのか?
ドカリと椅子に腰を下ろした壱也をぼんやり眺めながら、俺はまたグランドに視線を向けた。
……葉月……葉月って……学園祭の時に日向を探してたヤツか?
ま、委員会じゃない俺には関係ないけど。