ヒミツの王子さま!
こんな盗み聞きみたいなマネして……。
どーでもいいのに。
関係ないのに。
日向が、誰とどうしようと、俺には何も言う権利もないし。
それに……。
日向は壱也が好きなんだ。
俺は、誰かを好きなやつは好きにならない。
――絶対に。
「学祭以来、えらく人気者だなー。日向」
「えぇ? 何言ってんの。あれは……なんてゆーか……勢いというか。あたしは別にあの先輩が好きだからあそこに行ったわけじゃないよ?」
「っはは。 わかってるよ。 友達のためでしょ?日向はそーゆう子だからね。でも見物だったなあ。あの平手打ち。かっこよかったよ」
「……からかわないでよ」
その話題。
あの日以来、何度も聞いた。
楽しそうな葉月の声に、少しだけムッとした日向の声。
取り留めのない会話が続いている。
気が付けば、ここから見える校庭で部活をしていた生徒の姿がほとんどまばらになっていた。
……あほくさ。かーえろ。
なんだかこうしてここにいて、ふたりの会話を聞いてる自分がバカらしくなってきた。
小さくため息をつくと、俺はなるべく音をさせないように這ってその場を離れようとした。