社宅アフェクション
真綾がこの部室にくることは予期していなかった。こいつとの大元の勝負、大陸に告白するまでの条件の1つに、図書同好会には入部しないってあったし。


「お化け屋敷ねぇ。へぇ~」
「な、なんだよ……」


なんだ、その意味ありげな笑顔は!何企んで…


「学校祭まであと2週間くらいだけど、準備の進み具合はどう?」
「う~ん、まだまだ。かつ兄も部活終わったらきてくれるけど、人手が足りないかな」
「そうですね。人手不足は深刻です」


まさか、真綾っ……


「おい、まあ──」
「私も手伝うよ!お化け屋敷!まぁ、部活終わってからだけど…」
「ほんと!?やったぁ!!」
「おい、ちょっと待て!!」


大陸が喜んでいるところ悪いが、俺は声をあげた。3人の視線がこっちに向く。


「真綾!勝負の条件はどうした!図書同好会には──」
「勝負?何か戦ってるの?かつ兄とあや姉…」


あ、大陸にバレるわけにはいかないんだった…


真綾が俺に近づいてきた。そして耳元で、小さな声で言った。


「入部はしてないもん。お手伝いだよ、お・て・つ・だ・い!」
「くっ…」
「それに──」
「?」
「これ以上2人きりになんてさせないよ?あとは……内緒(笑)」


そういうと真綾は離れていった。“勝負”に悩んでいる大陸に何かを言うと、作業を手伝い始めた。


あいつの目的が手伝いではないことは分かってた。でも……内緒ってなんだ?
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