社宅アフェクション
勝彦は野球の試合が近いため、図書同好会の準備も部門への参加もできなくなるらしい…と酒田くんから聞いた。
そっか、甲子園かかってるんだっけ…じゃあ仕方ないか…って納得してる場合じゃ!!


昨日、私にそんなこと一言も言わなかったじゃん!だから私の作戦聞いても白々しい顔してたのか!(してたっけ…?)


しかも一斉メールの最後に、“大陸たちにはサプライズの人員増加だから、その時まで誰にも話すな、特に真綾には”ってあったって!!


ムカつくっ!!てかこれじゃあ、勝彦を辱めるどころか大陸と2人きりになるチャンスも…


「はぁ~あぁあ……」
「あや姉、疲れてるの?」
「へ?」
「ため息ついてたから。こんな遅くまで、無理につき合わせちゃってごめんね」
「あっ、ううん!とんでもない!疲れてないし、私が手伝いたいから手伝ってるの。大陸は悪くないよ?」


私の言葉に大陸が笑顔を見せた。


「ありがとう、あや姉」


あぁ、私、今すごく幸せだ……
大陸が笑顔になっている……


そうだよ。他に誰がいたって関係ない。大陸が楽しそうで、喜んでいて、笑顔になってくれさえすれば、それで幸せじゃん。


やっぱり2人になりたいけど──


「私、そろそろ帰らないと」
「かの子の母さん、心配性だもんな。って、もうこんな時間か!」


京子の声に時計を見ると、7時30分をまわっていた。


「よし、片付けるか。しゅた、そっち持って」
「了解。せーの!うわっ……直人!ちゃんと持てよ!!」
「悪ぃわりぃw」


男子2人も、ふざけながら道具や板を教室の隅へと運び始めた。


「真綾!ボーッとしてないで片付けしてよ!一番遅くきて、役に立たないわね」
「ちょっ…結局何1つ作ってない佳乃に言われたくないね!」
「はいはい、あや子もかの子も落ち着け」


言い合いを止められた私の目には、楽しそうに話しながら片付けをする大陸とさつきちゃんの姿が映った。

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