社宅アフェクション
川崎正吾のことは中学の時に知った。当時、逸材だと有名になった。
そいつの放る球は速い。とにかく速い。でもそれだけじゃない。正確さはもちろん、球種を自在にあやつり、その上、相手を的確に把握して封じ込める。
しかも4番打者。……ルックスも悪くない。


中学での最後の試合は、あいつのチームに負けた。



審判のかけ声が響き、川崎が投げる体勢にはいる。フォームは……きれいだ。


海斗は必死に食らいついたが、塁には出れなかった。
続くレフトの小田原。同じ3年で外野手ということもあって、比較的仲がいいやつだ。


こいつも中学の時、川崎に悔しい思いをさせられたと言っていた。“絶対に打ち返す”そう言って、小田原はベンチを出ていった。


1球目はきれいなストライク。2球目は小田原の苦手なコースで攻められた。そして3球目…宣言通り、小田原は球をバットに当てた。


足の速い小田原は、ギリギリだったが、塁に出た。
俺たちと応援団の歓声が上がった。


次はファーストの、弘(こう)こと弘毅。2年で初出場の弘が川崎と対峙するのは初だ。
気迫のある構えでボックスに立ち、バットには当てたが、1塁に足は届かず、アウトとなってしまった。


これで2アウト。しかし、小田原は2塁に進んでいる。


そして、俺の出番がきた。
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