社宅アフェクション
俺は努力を認めてもらえたのか、4番バッターに選抜された。嬉しかった反面、少し重荷だった。


まさに今、2アウト2塁。俺が塁に出て次の白石に繋げば、得点のチャンスだ。ここで俺が打てなければ、小田原たちの努力も無駄になる。


「かっ飛ばせ~っ、本荘!!藤掛ファイト~っ!!」


ボックスに立つと、応援団の声が聞こえた。
だめだ。この声が聞こえているということは、集中力が欠けている証拠だ。大事な場面だってのに……集中しろよ、俺!!


しかし、いざ川崎を目の前にすると、なんだろうか…頭の整理がうまくいかない。
中学の最後の試合で対峙した時のこととか、さっきまでの川崎のフォームとか、投げていたコースのこととか、あれこれ考えてしまう。


川崎の目が……怖い。


向かってきた1球目は鋭いカーブ。この場面で、やつも打たせる気はないらしい。空振った俺は2球目に備える。


声援とともに飛んできた2球目は超速球の直球。変化球でも仕掛けてくるかと構えていた俺は一瞬驚いたが、反応できた。しかし、ファール。


次こそ打つ……っ!!


意気込む俺に、川崎が不気味に微笑むのが見えた。その顔に嫌なものを感じるのと同時に飛び込んできた3球目はストレート……と思ったら落ちた。


思いきり振ったバットに球は当たった。しかし、すくい上げるように打ってしまった。


ぐんぐん伸びた、いや、上がった球は、スピードがあったこともあって外野まで飛んでいったが、ライトに捕られた。


3アウト。4番打者のくせに、俺は何やってんだよ……
< 208 / 331 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop