社宅アフェクション
補習も野球部もない放課後。学校祭を今週末に控えたこの学校は、本番さながらの賑わいをみせていた。


「今日はクラスの準備か」
「勝彦が参加すんの初めてじゃない?」
「そ…だな」


喫茶店の準備が実際どこまで進んでいるのか分からない。任命されていたメニュー係も、結局京子に押しつけたままだ。


「今日は何をす──」
「みなさん、注文していたメイド服と執事服が届きました。今から名前を呼ばれた順に取りにきてください」


俺の声に学校祭運営委員の声がかぶった。その内容に、作業が始まると思ってた俺は拍子抜けしたが、逆に直人と佳乃のボルテージは上がったようだった。


いざ手元に届いた衣装を見ると、俺の気持ちはぐんぐん下がってきた。隣では、真綾がため息をついている。


「これ着んのかよ…」
「これ着んのね…」


お互いのセリフもかぶる。まぁ、決まってたことだし、落ちこんでもしょうがねぇけど。
それよりメニューのことでも聞こうかと、衣装を受け取って戻ってきた京子に声をかけた。


「京子、メニュー係のことだけど──」
「やっと届いたぜ、メイド服。こういうのが堂々と着れるんだもんな。早く着てぇなぁ…」
「おい、京子」
「うおっ!なな、なんだよ本荘!…つか……なんか聞こえたか?」
「……別に」
「なんだよ、今の間っ!!」
「いいからメニュー係のこと教えろっ!!!!」


もちろん、京子のつぶやきも、この言い合いの後ろでメイド服の押しつけあいをしている直人たちも気になるけどな……
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