社宅アフェクション
私が練習を終えた時、時計の針は7:30を指していた。また、練習部屋にはひとりだった。
いつも居残りしていたという部長も、30分ほど前には帰っていった。


「私もそろそろ出よう…」


今日こんなに練習しても、まだ不十分な箇所がいくつもある。明日からも頑張らなくちゃ!


「よし、早く着替えて大陸のとこに行こう!」


いつもよりもだいぶ遅くなったけど、まだみんないるかな?

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急いで行ったけど、図書同好会の部室は真っ暗だった。


「先に帰るなんて、みんな薄情だなぁ」


8時近いこの時間なら普通か。靴をはきかえながら、ため息をついた。


外はさすがに暗い。ひとりで帰るのは久しぶりだ。……あれ?初めてかも。
夏の夜は暑いはずなのに、夜風がとても冷たく感じる。


「ふ~ん、ふふふ~ん、ふんんんふ~ん──」


鼻歌なんて歌ってみるけど、やっぱりつまんないな。明日からもこうなるのか……


だからってみんなに合わせて練習時間を削るのはダメだ!
一瞬弱気になりかけた自分の頬をバシバシ叩いた。


「なにやってんだ?自傷行為なんて、とうとう気が狂ったか」
「へっ!?」


この聞き慣れた声は……


「か、勝彦!!」


風がピタリと止んだ。 
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