社宅アフェクション
「お前こそ何言ってんだよ。定期考査の時の勝負と約束、忘れたのか?バカ」
「定期考っ……査の時は……あんなの無効だし!!あんた、部活、引退した!私、まだやってる!テスト負けた、でもスポーツ勝った!だから引き分けの無効!!!!」


オロオロしながら声を張る真綾に、はぁ…と俺はため息をついた。


「なんで片言気味なんだよ。自分でも何言ってんのか分かんなくなってんだろ。つか、約束変えてんじゃねぇよ」
「う″ぅ……」


あいつは勝手に自滅した。


「最近ね、勝彦はさ、本当はいいやつだったのかなぁって思ってたけど、やっぱヤなやつだ」
「いいやつに決まってんだろ。あ、そうだ。真綾、落とさねぇで受け取れよっと!」


隠し持っていた茶封筒を、ふてくされ顔の真綾に向けて投げた。
うわっと可愛くもない声を上げて、真綾はそれをつかんだ。


「何これ」
「別に。直人たちと好きに分けて、学校祭に使え。それ……もろもろの礼だから」
「へ?」


中にはわずかな金。礼を金にするってのは、なんかなぁって思ったけど、物的な礼がこれ以外思いつかなかったから。
でもこれだけじゃダメだって分かってるから…


「学校祭の準備とか、応援とか、その…なんだ……あ、ありがとな。お前らがいて良かったっつうか、まぁ……そんな感じだっ!!」
「あっ、ちょっ、勝彦!!」


自分で言ってて恥ずかしくなった。部屋に駆け込みベランダを閉める直前、真綾のポケットから、携帯の着信音が聞こえた。
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