社宅アフェクション
藤掛高校の学校祭は、10時から16時までになっている。初日は学生のみ、2日目は一般公開だ。


初日は9時から開祭式があり、2日目は16時半から閉祭式がある。そしてその後、藤掛高校名物グランドフィナーレが行われる。その名にふさわしく、花火で祭りの最後を飾るのだ。


学校祭は、そのイベント量から、カップル誕生なんてザラだ。毎年クラスで2、3人は、必ず大人の階段を上る。まぁ、俺には縁遠い話だが。


そんな理由で浮き足立っているやつもいる。3年になってもまだ希望を捨てていないあたり、現実を見れてねぇっていうか、おめでたいっていうか……まぁ、俺には縁遠い話だが?


「かっちゃん、なんだか浮き足立ってるね。なんのフラグ?」
「はあっ!?」
「学校祭でなんか面白いことでもあんの?」
「べ、別になんもねぇよ!!」


改めて思う。直人のこういうところが苦手だ。妙に勘が鋭いし、言い方があざといし。


「まぁ、かっちゃんが楽しそうなのはなによりだよ。俺も楽しみなことあるんだぁ」
「なんだよ」
「今朝ハニーから渡されたこのお金、何に使おうかなぁって!!」
「おい、それっ!!」


俺の謝礼金だ!直人は楽しそうに、目の前で小銭をジャラつかせている。これを平然と受け取ってことは、昨日送信した俺のメールも読んでるわけだ……


「こんなお金くれなくても、俺たちはずう~っと、かっちゃんのそばにいてあげるよ?」
「うるせぇ……」
「はははっ!!俺も、かっちゃんと仲間になれて良かったって思ってるからさ──」
「……?」


そう言った直人の様子は、さっきまでのからかいを含んだものとは少し違う気がした。


「そろそろ体育館行こうぜ!開祭式始まる!」
「あ、あぁ……」


腕を引かれるがまま、俺は体育館へ向かった。
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