社宅アフェクション
食べ終わった私たちは、しばらくそこで休んでいた。


「どうする?直人。どっかで遊ぶ?」
「う~ん、もう少しここにいたいかなぁ」
「いいよ。あぁでも蒼空のクラスにも行かないと拗ねられちゃうかな…」
「…ねぇ、ハニー」
「ん?」
「少し、昔の話をしてもいい?」



急に直人が真面目な顔をした。
昔の話?なんだろう……


「いいけど……何?中学時代とか?」
「もっと前。俺たちが出会う前から」
「出会う前?」


私たちが出会ったのは中学の時だ。その前の直人のことは知らない。そのことは確かに不思議に感じていた。同じ社宅住まいなのに……


「知ってる?俺たちが住んでる社宅の仕組み」
「…知らない。何かあるの?」
「会社での階級を表してる。D棟から順にCBAって会社内での地位が下がってるんだ。たまに社宅内での引っ越しあるでしょ?それが理由」



なに、そのカースト制度。引っ越しは疑問に思ったことはあるけど、そんな真実は全く知らなかった。聞いたことも──


「そんなの……」
「知ってるのはD棟の住人だけなんだ」
「じゃあ…直人の家って……」
「俺のお父さんの地位なんてどうでもいい。大っ嫌いだ。興味もない」


直人の雰囲気がいつもと違う。


「あいつのせいで俺は…苦しかった。毎日。でもそんな俺を救ってくれるものがあった。そのおかげで、俺は変にならないで済んだんだ」


直人の言っていることが、正直、よく分からない。でもそこまで追い込まれた直人を救ったものって…


「真綾。真綾が俺を救ってくれた」
「え……私…?」


私が……?どうして……
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