社宅アフェクション
気づいたら昼飯もなくなっていて、味もよく分からなかった。

「かつ兄、そろそろ行こうよ」
「え、行くって…どこに」
「お化け屋敷だよ?」
「え…」


ようやく思考は大陸だけに向けられた。
お化け屋敷?いや、大陸は午後からクラスの縁日の仕事って…


「忘れちゃったの?ほら、そら姉のクラスもお化け屋敷やってるって!行かないとそら姉に怒られちゃうから…嫌だけど…参考にもなるしって……」
「わ、忘れてねぇよ!そうだな、休憩時間も残り少ねぇし、早く行くか!」


そうだった……自分で提案したのに、頭から抜けていた。
特に希望はないと大陸が言ったから、俺が映画とお化け屋敷に決めた。


「でもさ、映画見て、お化け屋敷行って……なんか本当にデートみたいだね!」
「仕方ないだろ?どっちも来いって言われたんだから」
「嫌じゃないよ?かつ兄とデートっ!」


んぐっ…胸にズキッときた。大陸の笑顔……
そう、これは俺が仕組んだデートコース。古いか、とも思ったが、デートといったら他に思いつかなかった。
“来いと言われた”のは言い訳。恥ずかしくなって、後輩と蒼空を利用した。


「でも、やっぱりお化け屋敷って…行かなきゃだめかな?」
「大丈夫だ。俺がいるから安心しろ」
「うんっ!!」


自分で言うのもなんだが、知っての通り、俺もビビリのチキンだけどな。


俺は、もう1つの思考を完全に頭の中から排除してしまった。

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