社宅アフェクション
「それじゃ頑張れよ。俺も酒田とお化け屋敷、やってくるから」
「うん、よろしくお願いします。かつ兄と学校祭、楽しかったよ!教室まで送ってくれてありがとう!頑張るね」


12:42── 1Cの前で大陸と別れた。大陸は優しいから“楽しかった”なんて言ってくれるが…
正直、楽しませた自信はない。


俺の休憩時間はあと15分。
これくらいあれば……っ


俺は、携帯を取り出した。


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「どうしたの、かっちゃん。俺だけを呼び出すなんてさ。そろそろ喫茶店行かなきゃなんだけどなぁ」
「話が……したいんだ」
「話?なんの?」
「さっきの話だ」
「……さっきの………」


俺がメールをしてから5分後、待ち合わせた体育館裏。状況を察したらしい直人の表情が明らかに変わった。


「非常階段…直人もあそこの良さを知ってたんだな」
「……うん。誰も来ないのが、一番の売りだったんだけどね」


誰も来ない。その確率はただの偶然だった。


「聞いちゃったんだね、かっちゃん」
「あぁ……」
「…ははっ。参ったなぁ!特にかっちゃんには聞かれたくない話だったのになぁ!ほんと、自分に正直だね、かっちゃんは。わざわざ俺を呼び出しちゃうんだもん」


直人は笑いながら頭を掻いた。分かりやすい、作り物の笑顔で。


「まぁ…少し話そっか」


直人は改まった様子で俺を見た。
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