社宅アフェクション
「詳しい話は…しなくていいよね」
「あぁ。聞いちまったから」
「じゃあさ、何を知りたくて俺を呼び出したわけ?」


その質問に俺は戸惑った。
ただ直人と話したい、そう直感的に思っただけで、具体的なことなんて考えてなかった。


「あ~っと…それは………」
「ふぅ……かっちゃんらしいね。じゃあ俺から質問。あの話を聞いて、かっちゃんは何を思った?」


何を───


「驚いた。俺を嫌いだったことも、真綾が好きだったことも」
「うん」
「今は仲間だと思ってくれてることは…その…嬉しいっつか、良かった…みたいな…」
「うん」
「あと、俺と同じだと思った」


次々と言葉が出てくる。自分でも不思議なくらいに。


「笑うことを知らなかった。でも今が楽しいと思えること。そんで……」


俺は一瞬ためらった。ためらって吐きだした。


「直人がなんだか羨ましく思った。そして、モヤモヤする。真綾がなんて返事したのか」


最後の言葉に、直人が少し、目を見開いた。
< 259 / 331 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop