社宅アフェクション
5番テーブルには、まだ京子が座っていた。


「ご指名ありがとうございます。はい、スイーツたこ焼き」
「サンキュー。でも、指名はしてないぞ?」
「あれ?直人にそう言われたんだけど…」
「ちょっ…2番テーブルのとこ…」


京子が指差すほうを見ると、2人組のうちの1人に、直人が胸ぐらをつかまれていた。


「おい。俺らは金払って指名つけたんだ。さっきの態度は客に失礼なんじゃね?」
「たった20円追加で威張らないでくださいよ。それにここ、キャバクラじゃないので」
「はぁ?減らず口たたいてんじゃ──」


直人はいつもの態度で返している。
2人組は完全に怒っている。
喫茶店全体の空気が張りつめていた。


「私のせいだよ!!止めなきゃ!!」
「待てっ、あや子っ!!」
「だって京子!直人が…っ!!」


その瞬間キャーッという悲鳴が聞こえ、直人が床に倒れこむのが見えた。


「直人っ!!!!」
「大丈夫だよ、ハニー」


直人は起き上がり、手で私を制止した。
そして、ニヤリと笑った。


「先に手を出したのは、そちらですからね」


そう言うと、手を構えた───


「野郎ども!!!!出番だぁ!!!!」
「「押忍!!!!」」


大声とともに、廊下からガタイのいい男がズラズラ入ってきた。知ってる限りで、柔道部、ボクシング部、ラグビー部、空手部……怖っ!!


「おい。俺のダチに手ぇ出したのは、誰だ?」
「学校の秩序を乱すやつは許さねぇぞ?」
「喧嘩上等!!……買うぜ?」
「ほう。ひょろっちい男どもだなぁ…」


あっという間に取り囲まれた2人組は、完全に萎縮している。


「す、すみませんでしたぁ~っ!!!!」


そして、逃げていった。


「お~い、代金払ってけよ~!」
「追いかけるか?会津っち」
「いいや。どうせ100円ぽっちだし。あっ、+20円……かw」


再びニヤリと笑い、私を見た。


「大丈夫?ハニー」
「あ…う、うん。直人は…?」
「この通り!!」
「良かった…」


今の出来事は、何だったのだろう……
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