社宅アフェクション
「誰だっ!うぐっ……」


振り向く前に口を塞がれた。体もガッチリ押さえられ、動くことすらできない。
一応野球で身体を鍛えていたはずなのに…


「うぐっ…うぅう……」
「はっはっは!後ろを取られるとは、まだまだだな、勝彦。私のつけた名前に負けてるぞ?」
「う?」


……私のつけた名前?
ふいに手がはなされた。


「ぷはっ…」
「久しぶりだ。大きくなったな、勝彦」
「え……」


そこには、見覚えのあるような知らない男がいた。


「あの…どちら様で……」
「…そうか。勝彦の記憶から、私も消えてしまったようだな……」


目の前で複雑そうな笑みを浮かべた男が、何を言っているのか分からない。
記憶が…なんだって?


「じいちゃんは、勝彦のことを1日たりとも忘れことはないぞ。きっと、美和子もな」
「じいちゃん?みわこ?」


突然の来客は、俺の頭を混乱させた。
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