社宅アフェクション
閉祭式は、体育館ではなくグラウンドで行われる。そのあとのグランドフィナーレにスムーズに移行できるように、毎年そういう流れになっている。
「かっちゃん!こっちこっち!」
「おー」
俺以外のいつものメンツはそろっていた。当然だ。すでに閉祭式は始まっているのだから。美里さんから逃げ隠れしているうちに、気づいたら……って感じだ。
……………あれ?
「酒田と京子は?」
「しゅたは京ちゃんと花火はイヤだってどっか行った。京ちゃんはふざけんなって探しにいった」
「そうか」
直人はニヤニヤしながら答えた。その顔に、俺もまぁいいやという気分になった。
見渡した先で、佳乃は開祭式同様はしゃいでいて、大陸や蒼空や由香里、真綾は笑いながら見ていた。大陸に声をかけたかったが、なんだか気後れして近寄れなかった。
「これで閉祭式を閉じます!次はみなさんお待ちかね、花火です‼準備をしますので、今しばらくお待ちください‼」
部門員の一声で、会場はさらに盛り上がる。周囲が、友達や仲間グループからカップルに変わっていく。
「直人、あのさ………」
「勝彦くん、行こ!特等席!」
「佳乃!?あれ、直人は……」
「さっきからいないよ?ほら、始まる前に移動しようよ」
隣で閉祭式を見ていたはずの直人はすでにいなくなっていて、俺は佳乃に腕を引っ張られていた。花火のこと、正確には“先約の女”のこと、聞きたかったんだけど……
佳乃に引かれ、着いた場所は部室棟3階、料理研究部の部室だった。
「ここって……京子の部活のとこか」
「ここ、花火が正面に上がってきれいだって京子が教えてくれたんだ。3年権限で貸し切り」
「そりゃすげぇ。まさに特等席だな」
俺は少し笑いながら言った。佳乃は真剣な顔で俺を見た。
「やっぱり勝彦くん、少しずつ戻ってきてる」
「え?」
急な話題変換についていけない。戻ってきてる?どこに?
「ゆっくりでいいよ。ゆっくり、あの頃の私たちに戻っていければいいの。いつか、勝彦くんは思い出してくれるって信じてるから」
「あの頃の私たち?思い出す?なんの話だよ」
佳乃の言っていることが分からない。最近多いんだ、分からないことが。もう増やさないでほしいのに。
「急にごめんなさい、勝彦くん。でも時間がなかったから。だから、今はこれだけ知っていてくれればいい」
混乱する俺の耳元に、佳乃の唇が近づく。
外では、ヒューッという独特の音が聞こえ始めていた。
「あなたが真綾と出会うずーっと前から、私は勝彦くんのことが大好き。心の底から大好きなんだよ」
小さな佳乃の声は、一発目の花火とともに、大きく大きく俺の中に広がった。
「かっちゃん!こっちこっち!」
「おー」
俺以外のいつものメンツはそろっていた。当然だ。すでに閉祭式は始まっているのだから。美里さんから逃げ隠れしているうちに、気づいたら……って感じだ。
……………あれ?
「酒田と京子は?」
「しゅたは京ちゃんと花火はイヤだってどっか行った。京ちゃんはふざけんなって探しにいった」
「そうか」
直人はニヤニヤしながら答えた。その顔に、俺もまぁいいやという気分になった。
見渡した先で、佳乃は開祭式同様はしゃいでいて、大陸や蒼空や由香里、真綾は笑いながら見ていた。大陸に声をかけたかったが、なんだか気後れして近寄れなかった。
「これで閉祭式を閉じます!次はみなさんお待ちかね、花火です‼準備をしますので、今しばらくお待ちください‼」
部門員の一声で、会場はさらに盛り上がる。周囲が、友達や仲間グループからカップルに変わっていく。
「直人、あのさ………」
「勝彦くん、行こ!特等席!」
「佳乃!?あれ、直人は……」
「さっきからいないよ?ほら、始まる前に移動しようよ」
隣で閉祭式を見ていたはずの直人はすでにいなくなっていて、俺は佳乃に腕を引っ張られていた。花火のこと、正確には“先約の女”のこと、聞きたかったんだけど……
佳乃に引かれ、着いた場所は部室棟3階、料理研究部の部室だった。
「ここって……京子の部活のとこか」
「ここ、花火が正面に上がってきれいだって京子が教えてくれたんだ。3年権限で貸し切り」
「そりゃすげぇ。まさに特等席だな」
俺は少し笑いながら言った。佳乃は真剣な顔で俺を見た。
「やっぱり勝彦くん、少しずつ戻ってきてる」
「え?」
急な話題変換についていけない。戻ってきてる?どこに?
「ゆっくりでいいよ。ゆっくり、あの頃の私たちに戻っていければいいの。いつか、勝彦くんは思い出してくれるって信じてるから」
「あの頃の私たち?思い出す?なんの話だよ」
佳乃の言っていることが分からない。最近多いんだ、分からないことが。もう増やさないでほしいのに。
「急にごめんなさい、勝彦くん。でも時間がなかったから。だから、今はこれだけ知っていてくれればいい」
混乱する俺の耳元に、佳乃の唇が近づく。
外では、ヒューッという独特の音が聞こえ始めていた。
「あなたが真綾と出会うずーっと前から、私は勝彦くんのことが大好き。心の底から大好きなんだよ」
小さな佳乃の声は、一発目の花火とともに、大きく大きく俺の中に広がった。