社宅アフェクション
しばらくしてチャイムが鳴り、担任が副担任と教室に入ってきた。


何事もなく朝のHR(ホームルーム)も終わり、入れ替わるように古文の先生が入ってくる。


今日もこうして午前中が過ぎていくのだろう。


俺は授業が好きだ。一番は野球だが、授業もいい。なぜなら、そのことだけ考えていればいいから。授業の時は授業のことだけ、野球の時は野球のことだけ、余計な思考は必要ない。



大陸のことも蒼空のことも真綾のことも直人のことも、一度すべて忘れて授業に没頭する。


そのはずだったのに……


真綾の、あの泣きそうな顔だけが教科書に浮かんでくる。


なんで…なんでだっ!大陸の笑顔ならまだしも真綾の泣き顔なんて…




全然授業に集中できず、午前中の授業がすべて終わった時には、真っ白の古文のノートが机の上に開かれていた。


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