社宅アフェクション
俺の一番古い記憶は夕日と公園。隣には真綾。何をしていたのかは忘れたが、その景色と一つの言葉だけは異様なほど覚えている。


“それでいいの。大丈夫。まあやがいるから”


その意味までは思い出せない。でも、これが一番古い記憶。俺の始まり。
だから、真綾と会う前のことは知らない。


「あっち!なんだこの部屋」


急に部屋の暑さが押し寄せてきた。さっきまで人のいなかった場所だ。もちろん冷房なんて入っていない。
俺はコップに大量の氷のみを入れ、そばにあった菓子を持って、部屋に急いだ。


部屋に入ると、涼しさが俺を包み込む。氷をひとつ口に含むと、その快適さは増した。


「ん゛~っ、あ゛ぁ……いいか、たまには。こんな日も」


受験生にだって、ベッドの上で寝ころびながら思想にふける日があってもいいだろう。
思想にふけ………言葉おかしいか?受験生。


それはさておいた。
次の氷を口に入れる。


「んぐっ!う……ん……ぐはっ!げほっげほっ……あ゛ぁ…死ぬがと思っだ」


寝ていたせいか、氷がのどに入り込んできた。普段強がってるが、こういうのには心が弱い。マジで怖かった。
こういう時、そばに誰かにいてほしいと心の底から思……


“心の底から大好きなんだよ”


あ、あれ……?佳乃の……
そういや俺、こ、告白されたのか?
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