社宅アフェクション
家に帰るとおいしい夕飯と温かいお風呂が待っていて、今日を振り返ると当たり前の光景が安心できた。


お風呂もあがってベランダで涼みながらジュースを飲んでいると、隣303号室のベランダにも誰かでてきた。


「あや姉!なんか朝ぶりだね!涼んでるの?」
「大陸!大陸もお風呂あがり?」
「う~ん、まぁ、そんなところかなぁ…」


言葉を濁す大陸。あ、蒼空になんか言われたな?部屋の中から蒼空の声がする。
昔から姉弟ゲンカをすると、必ず大陸はベランダに逃げる。


「お姉ちゃんに何か言われたの?」
「うん…。さっき帰ってきたんだけど、遅いって。何の用事なのか、何時になるのか、ちゃんと伝えなさいって」


大陸はヒタヒタと言葉を続ける。


「高校生になって、僕はもう子供じゃないんだからって言ったんだ。そしたらもっと怒られて……」
「蒼空、心配なんだよ、大陸のこと。もう家族を失いたくないから」
「うん……」


蒼空と大陸は、生まれた時から社宅にいるわけではない。大陸が4歳の時、両親が事故でなくなり、叔父叔母夫婦に引き取られた先が、この社宅だったと聞いた。


「そら姉の気持ちも分かるよ?僕よりも両親のこと覚えてるからこそ過保護なのも。でも─」
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