臆病者の散歩道
臆 病 者 の 散 歩 道
始まりを告げる言葉は
愛の言葉で
始まってしまえば
終わりもあるのだから
幸せな日々の始まりは
"さよなら"
この言葉を待つ日々の始まりでもある
どれだけ願っても
永遠なんてどこにもない
だから僕達は
始めることを恐れてる
手を伸ばせば届くけど
そのための最後の一歩を
踏み出せなくて
この気持ちはもう分かってるけど
手に入れた先にあるものが恐くて
夜空の下
星を見るフリして
君の後ろ姿を盗み見てた
どこまでも続いて
全てを包む空なら
終わりなんて恐くないんだろうね
全て欲しいと願ってしまうのは
全てなんて手に入れられないことに
気付いてしまったから
この星月夜が輝くのは
最期を迎えた星達が
その命を燃やすから
最期が最も美しいなんてね
僕等とは正反対なんだね
輝く星たちは僕等に
"愛せ"と言う
穏やかな月は僕等に
"寄り添え"と言う
真っ暗な夜道は僕等に
"恐れるな"と言う
『ほら 終わりだって
こんなにも美しいじゃないか』
そう僕等を急かす
『終わりを恐がったままじゃ
何も始まらない』
そう僕等を嗤う
ああ 熱に浮かされたようだ
ああ 夜風が心地いいからだ
ああ 僕はきっと 絆されてしまったんだ
伝えちゃいけない言葉が
溢れ出てしまう
飛び出てしまう
終わりへの始まり
君の名を呼んでしまう
君を引き止めてしまう
星月夜が静かに見つめる
君が立ち止まる
振り返る
星がひとつ 瞬いた…
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沖田 爽さん作
『臆病者の散歩道』