臆病者の散歩道


「それ、素敵でしょ。」

「え?」

気付けば詩に釘付けで。
読んでいた所で先生が入ってきていた。

「それ。私の好きな作家さんの詩なの。思わず写しちゃった。」

いい歳した大人が楽しそうに笑う。
この先生はいつもそうだ。
先生面が似合わない。
なんだかんだで人気がある先生だった。

「掃除、もういいよ。」

「え?」

散らかった紙を集める俺に向かって笑顔の先生。

「ここはやるから。次からちゃんと起きててね。」

「はーい。」

ラッキー!と思いながら図書室を出る。


だけど、俺の中は掃除が早く終わった事よりも、柚の事が占めていた。


それからあの詩。
まるで俺みたい。

『終わりを怖がったままじゃ何も始まらない』

思わずグサッと来た。


< 4 / 26 >

この作品をシェア

pagetop