臆病者の散歩道
「それ、素敵でしょ。」
「え?」
気付けば詩に釘付けで。
読んでいた所で先生が入ってきていた。
「それ。私の好きな作家さんの詩なの。思わず写しちゃった。」
いい歳した大人が楽しそうに笑う。
この先生はいつもそうだ。
先生面が似合わない。
なんだかんだで人気がある先生だった。
「掃除、もういいよ。」
「え?」
散らかった紙を集める俺に向かって笑顔の先生。
「ここはやるから。次からちゃんと起きててね。」
「はーい。」
ラッキー!と思いながら図書室を出る。
だけど、俺の中は掃除が早く終わった事よりも、柚の事が占めていた。
それからあの詩。
まるで俺みたい。
『終わりを怖がったままじゃ何も始まらない』
思わずグサッと来た。