極上な恋のその先を。
可愛い後輩
∟…和泉side
◇和泉side
「じゃあ、皆さんお疲れ様です!」
かんぱーい!と言う真山の掛け声とともに、それぞれが缶ビールを掲げた。
――週末。
ちょうど花見シーズンなのもあって、俺たちは仕事終わりに都内の桜の名所に足をのばしていた。
真山が昨日から場所取りしたって場所は、確かによくて。
俺たちの頭上には、満開に咲き乱れた桜の花が、オレンジのライトに照らされて俄かに幻想的な雰囲気を漂わせていた。
……違うな。幻想的ってか、あるいみちょっと不気味。
俺をビールを仰ぎながら桜を見上げ、そんな事を思った。
「センパイ!」
「?」
人懐っこい声に視線を落とせば、目の前にうまそうな焼き鳥が差し出されていた。
「……真山、んな俺に気ぃ使うな」
そう言いつつも、差し出されたそれを受け取る。
そんな俺に満足げに笑みを零すと、真山はそのまま俺の隣を陣取った。
「何言ってんすか!俺とセンパイの仲じゃないっすか!」
「……」
コイツ、俺のなんだ?
パリから帰って、今日で3日。
向こうから持ち帰ってきた仕事と、新たにここで担当する案件。
お世話になっている人たちへの挨拶周りがようやく終わり、やっと一息つけていた。
パクリ、と焼き鳥を頬張れば、香ばしいタレの風味が鼻に抜ける。
「佐伯ー!ビールまだあるか?」
「あ、はい!」
部長のその声に顔を上げると、さっきから慌ただしく動き回る渚がクーラーボックスからビールをいくつか取り出しているところだった。
「……」
頬にかかる髪を耳にかけ、笑顔で部長たちにビールを手渡している。
はぁ……帰って来てから渚に触れてねぇな……。
俺はクイッとビールを飲み干して、空き缶をクシャリと握りつぶした。