極上な恋のその先を。
「真山くん、あんまり飲み過ぎないで下さいよ」
そう言って顔を出したのは、時東さん。
「悪いな久遠、疲れてるのに」
時東さんは俺に向き直ると穏やかな笑顔を浮べた。
この関係性は、全然変わってないんだな。
「大丈夫ですってば!それに、今日はセンパイの歓迎会も兼ねてるんですよ?パーッと楽しまなくちゃ!ね、センパイ! あ、センパイ!何飲みますか?」
すかさず俺の手から空き缶を奪ったのは、真山。
はあ……。
俺は真山をジロリと睨み、「ビール」とつぶやいた。
「……」
この公園には、他にもたくさんの花見客がいて。
そのどこからも楽しそうな声が聞こえてきた。
「で、パリはどうだったの?」
いつの間にかそこにいた柘植が、そう言って俺を覗き込んだ。
チラリと見て、すぐにビールを仰ぐ。
「ああ、うん。すげぇ色々勉強になったし、充実してたよ」
「磯谷さんて、あー見えて結構厳しいからな。さすがのお前も大変だったろ」
可笑しそうにそう言った柘植は、つまみをポイッと口に放り込んだ。
時折こっちを見るその眼差しは、3年前のそれとは何も変わっていない。