極上な恋のその先を。
「――別に?俺、磯谷さんに愛されてるし」
「え、そんな事してたの……君らっ!」
大げさに驚いて見せた柘植に、思わずため息が零れた。
「変な意味じゃねーよ。色々面倒見てもらってるし」
「あー、そっち?俺はてっきりパリに行ってる間にグレーゾーンにでもなったのかと思ったよ。 あっはは」
「……グレー?」
あははってコイツな。
「よかったね、渚ちゃん。コイツはやっぱりただの仕事人間だよ」
え?
柘植の視線の先を追う。
いつの間にか隣に渚がいて、俺の視線に気付いてビクリと肩を震わせた。
「い、いきなり帰ってくるから驚いちゃいましたよ!」
ビクビクしたまま、そう言って手元の缶を見つめている。
「だよね~」
「……」
何をそんな怯えてんだよ。
ジッと見つめていると、その頬がみるみるうちに赤く染まる。
「そうだ、ミュウちゃんは?」
「美優?」
「一緒に帰って来たの?」
なぜか身を乗り出して来た柘植に、思わず眉間にシワがよる。
「いや。あれ、そういやアイツ、今どこにいんだろーな」
渚から視線を外し、ビールに手を伸ばす。
コクリと口に含めば、すっかり生ぬるくなっていて、思わず顔をしかめた。