極上な恋のその先を。


「……で、お前はいつまでそこでそうしてんだよ」



頭上の桜を見上げたままそう言うと、草を踏む音がして渚が顔を覗かせた。



「き、気付いてたんですか?」



頬を真っ赤に染めた渚が、遠慮がちに近づいてくる。

なにしてんだよ。まったく。


煙草の煙を吐き出すついでに、ため息が零れた。



「気付くに決まってんだろ。 アホか」

「……」


赤くなっていた頬が、今度はムッと膨らんだ。

……。


隣に並んだ渚が、何かに気付きパっと笑顔になる。



「わ!この公園、こんな場所があったんですね。すっごくキレイ」


一歩、また一歩と池に歩み寄り、それからクルリと振り返った。


「風もないし、月が鏡になってて、ほら!くっきり映ってます。ね、センパイ……」


3年前よりも、少しだけ大人びたように見える渚。
髪が短くなったせいか?
それとも……年齢のせいか。

白い煙の向こうで、ほんのりと頬を染めた渚が、俺を見上げたまま押し黙った。


何か言いたげに、その瞳をユラユラと揺らす。



「……」

「……」



ただ黙って、その言葉の続きを待っていると、意を決したように渚が口を開いた。



「あ、あのセンパイ……」







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